リスクオン・リスクオフとは
定義
| 状態 | 意味 | 投資家の行動 |
|---|---|---|
| リスクオン | 投資家がリスクを積極的に取る状態 | 高金利通貨・株・資源国通貨を買う |
| リスクオフ | 投資家がリスクを避ける状態 | 安全通貨(円・フラン)・国債・ゴールドを買う |
ひと言でまとめると、「世界の投資家がどれくらいリスクを取りたがっているか」 を示す概念です。
身近な例で理解する
天気に例えると分かりやすいでしょう。
- 晴れの日(リスクオン): 外に出かけたい気分。投資家もリスクのある資産(高金利通貨・株)に積極的にお金を振り向ける
- 嵐の日(リスクオフ): 家にこもりたい気分。投資家も安全な場所(安全通貨・国債・ゴールド)にお金を逃がす
重要なのは、リスクオン・リスクオフは0か100かの二択ではないということです。晴れと嵐の間にも曇りがあるように、市場のリスクセンチメントにもグラデーションがあります。
リスクオン・リスクオフで通貨はどう動くか
通貨の分類
FXで取引される8つの主要通貨は、リスクセンチメントに対する反応で大きく3つに分類できます。
安全通貨(リスクオフで買われる)
| 通貨 | 安全通貨とされる理由 |
|---|---|
| JPY(日本円) | 世界最大の対外純資産国。有事に海外資産を売って円に戻す動き(レパトリエーション) |
| CHF(スイスフラン) | 永世中立国。政治的安定、金融セクターへの信頼 |
| USD(米ドル) | 基軸通貨としての信頼。金融危機時には「ドルの避難所需要」が発生 |
リスク通貨(リスクオンで買われる)
| 通貨 | リスク通貨とされる理由 |
|---|---|
| AUD(豪ドル) | 資源国通貨。金・鉄鉱石の輸出大国。中国経済の影響を強く受ける |
| NZD(NZドル) | 資源国通貨。酪農・農産物の輸出国。高金利通貨としての歴史 |
| CAD(カナダドル) | 資源国通貨。原油の主要輸出国。米国経済と連動 |
中間的な通貨
| 通貨 | 特徴 |
|---|---|
| EUR(ユーロ) | 状況次第で安全通貨にもリスク通貨にもなる。欧州固有のリスク要因にも左右される |
| GBP(英ポンド) | ボラティリティが高く、リスクセンチメントに敏感だが一方向には偏りにくい |
リスクオン時の通貨の動き
リスクオンの環境では、投資家は高いリターンを求めて資金を動かします。
典型的な通貨強弱の並び順:
上(強い) AUD / NZD / CAD
中間 EUR / GBP / USD
下(弱い) JPY / CHF
- 高金利通貨・資源国通貨が買われて上に来る
- 安全通貨(特に円)が売られて下に沈む
- 通貨強弱チャートではきれいに扇状に広がるパターンが出やすい
リスクオフ時の通貨の動き
リスクオフの環境では、安全資産への逃避が起きます。
典型的な通貨強弱の並び順:
上(強い) JPY / CHF
中間 USD / EUR / GBP
下(弱い) AUD / NZD / CAD
- リスクオンの時とほぼ真逆の並び順になる
- 特に円が急上昇し、豪ドルが急落するパターンが多い
- 通貨強弱チャートではリスクオンとは反対方向に扇状に広がる
リスクオン・リスクオフを引き起こす要因
リスクオンを引き起こすもの
| 要因 | 具体例 |
|---|---|
| 良好な経済指標 | 米国雇用統計が予想を上回る、GDP成長率が好調 |
| 金融緩和 | 中央銀行の利下げ、量的緩和の発表 |
| 地政学リスクの後退 | 紛争の停戦合意、貿易摩擦の解消 |
| 株式市場の上昇 | 米国株の最高値更新、世界的な株高 |
| 企業業績の好調 | 主要テック企業の決算が予想を上回る |
リスクオフを引き起こすもの
| 要因 | 具体例 |
|---|---|
| 悪い経済指標 | 雇用統計の大幅悪化、景気後退の兆候 |
| 金融引き締め懸念 | 予想外の利上げ、タカ派発言 |
| 地政学リスク | 軍事衝突、テロ、政治的不安定 |
| 金融市場の混乱 | 株式市場の暴落、信用不安、銀行破綻 |
| パンデミック | 新型感染症の拡大 |
過去のリスクオフ事例
| 年 | イベント | 通貨への影響 |
|---|---|---|
| 2008 | リーマンショック | 急激な円高(USD/JPY: 110→87)、AUD暴落 |
| 2011 | 東日本大震災 | 円高(レパトリ期待)、AUD/JPYも急落 |
| 2015 | チャイナショック | 円高、資源国通貨暴落 |
| 2020 | コロナショック | 初期はドル高円高、AUD/NZD急落 |
| 2022 | ロシア・ウクライナ紛争 | CHF高、EUR安、資源価格高騰 |
通貨強弱チャートでリスクセンチメントを読む
ここからが本題です。通貨強弱チャートはリスクセンチメントを可視化する最も直感的なツールです。
パターン1: 明確なリスクオン
特徴:
- AUD・NZD・CADが上部に位置
- JPY・CHFが下部に位置
- 上下の乖離が大きく、きれいに分かれている
トレード方針:
- AUD/JPY、NZD/JPYなどのクロス円の買いが有効
- 安全通貨売り × リスク通貨買いの組み合わせで利益を狙う
- 通貨強弱の乖離が広がっている間はトレンドフォロー
パターン2: 明確なリスクオフ
特徴:
- JPY・CHFが上部に位置
- AUD・NZD・CADが下部に位置
- 急激に変化することが多い(パニック的な動き)
トレード方針:
- AUD/JPY、NZD/JPYなどのクロス円の売りが有効
- リスクオフは突然始まり、動きが激しいためロットは控えめにする
- ゴールドも同時に急騰していれば、リスクオフの信頼度が高い
パターン3: リスクセンチメント不明確
特徴:
- 8通貨が中央付近に固まっている
- 安全通貨とリスク通貨の明確な分離がない
- 通貨の順位が頻繁に入れ替わる
トレード方針:
- リスクセンチメントを根拠にしたトレードは見送る
- 個別の通貨要因(経済指標、金利発表)に注目
- 明確なパターンが出るまで待つ
パターン4: USDだけが突出(ドル一強/ドル一弱)
特徴:
- USDだけが最上位または最下位
- 他の通貨はリスクオン/リスクオフの序列に従っていない
解釈:
- これはリスクセンチメントの変化ではなく、ドル固有の要因(FOMC、雇用統計など)が原因
- ドルストレート(EUR/USD、GBP/USDなど)でトレードする方が効率的
- クロス円でのリスクオン/リスクオフ戦略は使わない
実践:通貨強弱チャートを使ったトレード手順
ステップ1: 今日のリスクセンチメントを確認する
通貨強弱チャートを1日の起点(東京オープンやロンドンオープン)から確認し、現在のリスクセンチメントを判定します。
チェックポイント:
- JPYとCHFの位置(上部なら→リスクオフ気味)
- AUD、NZD、CADの位置(上部なら→リスクオン気味)
- 上下の乖離の大きさ(大きいほど明確なセンチメント)
ステップ2: 他の指標で裏付けを取る
通貨強弱だけでなく、以下もチェックして判断の精度を上げます。
| 指標 | リスクオンの兆候 | リスクオフの兆候 |
|---|---|---|
| 日経平均・S&P500 | 上昇 | 下落 |
| ゴールド(XAU/USD) | 下落・安定 | 急上昇 |
| VIX(恐怖指数) | 20以下 | 30以上 |
| 米国債利回り | 上昇 | 急低下(債券に逃避) |
ステップ3: 通貨ペアを選ぶ
リスクセンチメントが明確なら、最も強い通貨と最も弱い通貨のペアでトレードします。
| センチメント | おすすめ通貨ペア | 方向 |
|---|---|---|
| リスクオン | AUD/JPY、NZD/JPY、CAD/JPY | 買い |
| リスクオフ | AUD/JPY、NZD/JPY、AUD/CHF | 売り |
なぜクロス円が効果的なのか?
リスクオンではAUDが買われ(上昇要因)JPYが売られ(上昇要因)、2つの力が同じ方向に働くため、AUD/JPYはドルストレートよりも大きく動きやすい。リスクオフでは逆にAUDが売られJPYが買われ、下落方向に2つの力が働きます。
ステップ4: エントリーとリスク管理
- テクニカル分析でエントリーポイントを決める(押し目買い、戻り売りなど)
- 損切りは必ず設定する(リスクセンチメントは突然反転することがある)
- 通貨強弱の乖離が縮小し始めたら利確を検討
- 重要イベント(FOMC、雇用統計など)の前はポジションを軽くする
よくある誤解と注意点
「円高 = リスクオフ」とは限らない
円高の原因はリスクオフだけではありません。
- 日銀の利上げ → 金利差縮小による円高(リスクオフではない)
- 日本の貿易黒字拡大 → 実需の円買い(リスクオフではない)
- ドル安局面 → ドル売り主導の相対的な円高(リスクオフではない)
通貨強弱チャートでJPYだけでなく他の安全通貨(CHF)やリスク通貨(AUD)の動きも確認し、本当にリスクオフなのかを判断することが重要です。
判別方法:
- JPYもCHFも上昇、AUD・NZDが下落 → リスクオフの可能性が高い
- JPYだけ上昇、他は普通 → 円固有の要因(日銀関連など)
リスクオフは長続きしないことが多い
リスクオフ局面はパニック的な動きであり、通常は数日〜数週間で収まります。一方、リスクオンは緩やかに長く続く傾向があります。
- リスクオフでの売りトレードは短期決戦が基本
- リスクオンでの買いトレードは比較的長く持てる
米ドルは状況によって立場が変わる
米ドルは、リスクセンチメントに対して一貫した動きをしません。
- 通常のリスクオフ(地政学リスクなど)→ ドルは中立〜やや買われる
- 米国発のリスクオフ(米銀行破綻など)→ ドルも売られる
- 世界的な金融危機(リーマンショック級)→ ドルが急激に買われる(ドルの避難所需要)
このため、リスクオン/リスクオフの分析ではJPYとAUDの動きを最も重視するのがシンプルで有効です。
まとめ
リスクオン・リスクオフは、FX市場の大きな資金の流れを決める根本的な力です。
要点の整理:
- リスクオンでは高金利・資源国通貨(AUD/NZD/CAD)が買われ、安全通貨(JPY/CHF)が売られる
- リスクオフではその逆。安全通貨が買われ、リスク通貨が売られる
- 通貨強弱チャートで安全通貨とリスク通貨の位置関係を見れば、今のセンチメントが一目で分かる
- AUD/JPYは「リスクセンチメントのバロメーター」として最も分かりやすい通貨ペア
- 「円高 = リスクオフ」とは限らない。CHFやAUDの動きも合わせて判断する
- リスクオフは短期、リスクオンは長期の傾向がある
FX-Laboの通貨強弱チャートで、今の市場が「晴れ」なのか「嵐」なのかを確認してみてください。安全通貨とリスク通貨の位置関係を見るだけで、市場の空気が読めるようになります。


























