ダウ理論の6つの基本原則
原則1: 価格はすべての情報を織り込む
経済指標、金融政策、地政学リスク、投機筋の思惑 — あらゆる情報は価格に反映される。
つまり、チャート(価格の動き)を分析すれば、すべてのファンダメンタルズ要因を「結果として」捉えることができるという考え方です。
FXでの実践:
- チャートを見れば「市場が何を織り込んでいるか」が分かる
- 通貨強弱チャートは、この原則を8通貨分同時に可視化したもの
原則2: トレンドは3種類ある
| 種類 | 期間の目安 | FXでの対応時間足 |
|---|---|---|
| 主要トレンド(長期) | 1年〜数年 | 月足・週足 |
| 二次トレンド(中期) | 3週間〜3ヶ月 | 日足・4時間足 |
| 小トレンド(短期) | 3週間未満 | 1時間足・15分足以下 |
重要なのは、短期トレンドは中期トレンドの中の一部であり、中期トレンドは長期トレンドの中の一部であるということです。
FXでの実践:
- 自分のトレードスタイルに合ったトレンドを把握する
- デイトレードなら二次トレンド(4時間足)の方向に逆らわない
- 上位足のトレンド方向に合ったエントリーのほうが勝率が高い
原則3: 主要トレンドは3つの段階がある
| 段階 | 参加者 | 特徴 |
|---|---|---|
| 先行期(蓄積期) | 機関投資家、スマートマネー | トレンドの始まり。まだ多くの人は気づいていない |
| 追随期(参加期) | 一般トレーダー | トレンドが明確になり、多くの人が参加。最も利益を出しやすい |
| 利食い期(過熱期) | 遅れてきた人 | メディアが話題にする。プロが利確を始め、転換が近い |
FXでの実践:
- 追随期に乗るのが最も安全で利益を出しやすい
- 「ニュースで大きく取り上げられるようになったら」利食い期の可能性
- 通貨強弱チャートで勢いが加速している段階が追随期
原則4: トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する
ダウ理論で最もFXに直結する、最重要の原則です。
この原則は、トレンドの定義とトレンド転換の基準を示しています。
上昇トレンドの定義
高値と安値がともに切り上がっている状態。
高値3 ●
↗
高値2 ●
↗
安値2 ● 高値1 ●
↗
安値1 ●
- 高値1 < 高値2 < 高値3 かつ
- 安値1 < 安値2
この構造が続く限り、上昇トレンドは「継続」と判断します。
下降トレンドの定義
高値と安値がともに切り下がっている状態。
- 高値1 > 高値2 > 高値3 かつ
- 安値1 > 安値2
トレンド転換のシグナル
上昇トレンドの転換:直近の押し安値を下に割り込んだとき 下降トレンドの転換:直近の戻り高値を上に超えたとき
これがダウ理論によるトレンド転換の唯一の基準です。
原則5: トレンドは出来高でも確認される
出来高(取引量)がトレンドの方向と一致しているとき、そのトレンドは信頼できます。
FXでの注意: FXはOTC(店頭取引)市場のため、正確な出来高データが存在しません。代わりに以下で代用します。
- 通貨強弱の乖離の大きさ → 乖離が大きいほど「参加者が多い」と解釈
- ティック数 → 一部のブローカーが提供する取引回数データ
- ボラティリティ → 値幅が大きいほど参加者の関心が高い
原則6: 複数の指標は互いに確認し合う
ダウは「工業株平均と輸送株平均が同じ方向に動いているとき、トレンドが確認される」と述べました。
FXでの実践:
- 通貨強弱チャートはこの原則を完璧に体現しています
- USD/JPYだけ見て「ドルが強い」と判断するのではなく、通貨強弱チャートでUSDが他のすべての通貨に対して強いことを確認する
- 複数の通貨ペアが同じ方向を示していれば、トレンドの信頼度が高い
押し安値と戻り高値
ダウ理論を実践する上で最も重要な概念が押し安値と戻り高値です。
押し安値とは
直近の高値を更新する起点となった安値のことです。
上昇トレンドにおいて、この押し安値がトレンド継続の最終防衛ライン。ここを割ると上昇トレンドは崩壊したと判断します。
戻り高値とは
直近の安値を更新する起点となった高値のことです。
下降トレンドにおいて、この戻り高値がトレンド継続の最終防衛ライン。ここを超えると下降トレンドは崩壊したと判断します。
判断の手順
上昇トレンドの場合:
- 高値が更新されたら、その起点の安値を「押し安値」としてマークする
- 次に価格が下がってきたとき、押し安値を割らなければ上昇トレンド継続
- 押し安値を割ったら → トレンド転換の可能性
下降トレンドの場合:
- 安値が更新されたら、その起点の高値を「戻り高値」としてマークする
- 次に価格が上がってきたとき、戻り高値を超えなければ下降トレンド継続
- 戻り高値を超えたら → トレンド転換の可能性
ダウ理論を使ったトレード戦略
戦略1: トレンドフォロー
ダウ理論の「トレンドは継続する」原則に基づき、トレンド方向に順張りする。
上昇トレンド中の買い手順:
- ダウ理論で上昇トレンド(高値・安値の切り上がり)を確認
- 押し目(一時的な下落)を待つ
- 押し安値を割っていないことを確認
- 反転のサインが出たら買いエントリー
- 損切りは押し安値の少し下
戦略2: トレンド転換の初動を狙う
押し安値(戻り高値)のブレイクを待ってからエントリーする。
下降トレンド → 上昇転換の場合:
- 下降トレンド中、戻り高値を特定
- 価格が戻り高値を上にブレイク → トレンド転換の可能性
- ブレイク後の押し目を待って買いエントリー
- 損切りは直近安値の少し下
戦略3: マルチタイムフレーム分析
上位足のダウ理論の状態を確認してから、下位足でエントリーする。
| 上位足(4時間足) | 下位足(15分足) | トレード |
|---|---|---|
| 上昇トレンド | 押し目から反転上昇 | 買い ✓ |
| 上昇トレンド | 下降中(調整) | 様子見(反転を待つ) |
| 上昇トレンド | 下降トレンド転換 | 慎重に(上位足と矛盾) |
| トレンドなし | — | 見送り |
上位足と下位足のトレンド方向が一致しているときにエントリーするのが、最も勝率の高い方法です。
ダウ理論と通貨強弱の組み合わせ
ダウ理論で「方向」、通貨強弱で「通貨ペア選択」
- ダウ理論で各通貨ペアのトレンド状態を把握
- 通貨強弱チャートで強い通貨と弱い通貨を特定
- 強い通貨を買い × 弱い通貨を売りの方向で、ダウ理論上もトレンド中の通貨ペアを選ぶ
例:
- 通貨強弱: USDが最強、JPYが最弱
- USD/JPYの日足: 高値・安値ともに切り上がり(上昇トレンド)
- → USD/JPYの買いが最適
ダウ理論のトレンド転換を通貨強弱で先読みする
ダウ理論のトレンド転換シグナル(押し安値割れ)が出る前に、通貨強弱チャートで転換の兆候を先に察知できることがあります。
- USD/JPYは上昇トレンド中だが、通貨強弱チャートでUSDの勢いが弱まっている
- → 「まだトレンド中だけど、そろそろ転換するかも」という早期警戒
よくある失敗
ヒゲを無視する
ローソク足の「ヒゲ先」と「実体」のどちらで高値・安値を判断するかは、トレーダーによって異なります。初心者はまず実体ベースで判断し、慣れてきたらヒゲも含めて分析しましょう。
時間足を固定しない
1時間足で上昇トレンドだと思ったら15分足に切り替え、今度は下降トレンドに見える…。分析する時間足をコロコロ変えると判断が揺らぎます。自分のトレードスタイルに合った時間足を決めて、一貫して使いましょう。
「転換かも」と先走る
押し安値を割る前に「そろそろ転換しそうだから売ろう」と先走るのは危険です。ダウ理論の原則は**「明確な転換シグナルが出るまで、トレンドは継続すると判断する」**です。
まとめ
ダウ理論は、テクニカル分析の最も根本的なフレームワークです。
ここだけは押さえよう:
- 上昇トレンド = 高値・安値がともに切り上がる状態
- 下降トレンド = 高値・安値がともに切り下がる状態
- トレンドは押し安値(戻り高値)を割るまで継続と判断する
- トレンドの「追随期」に乗るのが最も安全で利益を出しやすい
- マルチタイムフレームで上位足と下位足の方向を一致させる
- 通貨強弱チャートは、ダウ理論の「複数の指標で確認」原則を体現している
- 通貨強弱でトレンド転換の兆候を先読みできる
まずは通貨強弱チャートで強弱が明確な通貨ペアを選び、そのチャート上で高値・安値の切り上がり/切り下がりを確認する習慣を付けてみてください。






















