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通貨強弱チャートの「単位」と仕組みを解説|何を根拠にしているのか
通貨強弱チャートの縦軸の単位は何か?どう計算されているのか?印象操作ではなく数学的根拠に基づいた指標であることを、計算方法を示して解説します。
通貨強弱チャートがSNSで話題になると、「縦軸の単位は何?」「根拠のない印象操作では?」という声が上がることがあります。 結論から言うと、通貨強弱チャートは為替レートの実際の変動率(%)から数学的に計算された指標であり、恣意的な操作が入る余地はありません。 具体的な計算過程を数値で示しながら、その仕組みを明らかにします。

通貨強弱チャートの縦軸は何か

答え:各通貨の「相対的な変動率(%)」

通貨強弱チャートの縦軸は、ある基準時点からの各通貨の価値変動を百分率(%)で示したものです。

例えば、ある通貨のラインが「+0.5」の位置にあれば、基準時点からその通貨の価値が他通貨に対して平均0.5%上昇したことを意味します。

これは「なんとなく強い」という主観的な評価ではなく、実際の為替レートの変動から算出された数値です。

計算方法を具体的に見てみよう

ステップ1:各通貨ペアの変動率を計算

まず、ある通貨が関わるすべてのメジャー通貨ペアの変動率を計算します。

例として、基準時点から現在までのUSD(米ドル)の強弱を計算してみます。USDが含まれる主要7ペアの変動率を求めます。

通貨ペア基準時点現在変動率USDの動き
EUR/USD1.08001.0770-0.28%USDが強くなった
USD/JPY150.00150.45+0.30%USDが強くなった
GBP/USD1.26001.2580-0.16%USDが強くなった
USD/CHF0.88000.8825+0.28%USDが強くなった
AUD/USD0.65000.6475-0.38%USDが強くなった
NZD/USD0.57000.5680-0.35%USDが強くなった
USD/CAD1.36001.3640+0.29%USDが強くなった

ポイント: USD/JPYのようにUSDが基軸通貨(左側)のペアは「上昇 = USDが強い」。EUR/USDのようにUSDが決済通貨(右側)のペアは「下落 = USDが強い」と判断します。

ステップ2:USD視点に統一して平均を取る

各ペアの変動率を「USD目線」に統一します。

対通貨USD目線での変動率
vs EUR+0.28%
vs JPY+0.30%
vs GBP+0.16%
vs CHF+0.28%
vs AUD+0.38%
vs NZD+0.35%
vs CAD+0.29%

これらの平均値を計算します。

(0.28 + 0.30 + 0.16 + 0.28 + 0.38 + 0.35 + 0.29) ÷ 7 = +0.29%

この「+0.29%」が、その時点でのUSDの通貨強弱の値です。

ステップ3:8通貨すべてに対して同じ計算を行う

USD以外の7通貨(EUR、JPY、GBP、CHF、AUD、NZD、CAD)についても同じ計算を行います。

その結果、例えばこのようになります。

通貨強弱値
USD+0.29%
EUR+0.05%
JPY-0.35%
GBP-0.08%
CHF-0.12%
AUD+0.15%
NZD+0.10%
CAD-0.04%

これをチャートにプロットしたものが通貨強弱チャートです。

「印象操作」ではない理由

1. 入力データは実際の為替レート

通貨強弱チャートの計算に使われるのは、実際に市場で取引されている為替レートです。作成者が数値を恣意的に変えることはできません。

レートのソースはFX会社やインターバンク市場の実勢レートであり、誰でも検証可能な公開データです。

2. 計算方法は一般的な数学(変動率の平均)

先ほど示したように、計算プロセスは各通貨ペアの変動率を求め、その平均を取るだけです。複雑な操作や恣意的な重み付けはありません。

一般的な通貨強弱チャートでは、7つの主要通貨ペアを等しい重みで平均しています。特定の通貨ペアを強調したり、都合の悪いペアを除外したりすることはありません。

3. 全通貨の合計はゼロになる

通貨強弱チャートの重要な性質として、すべての通貨の強弱値を合計するとゼロ(またはゼロに近い値)になるという点があります。

これは、FXが必ず2通貨の交換であるためです。ある通貨が強くなれば、対になる通貨は弱くなります。この性質があるため、特定の通貨だけを意図的に強く見せる操作はできない構造になっています。

よくある疑問

Q. 起点を変えると結果が変わるのは操作ではないか?

「起点を変えると見え方が変わる」のは事実ですが、操作ではありません。

これは株のチャートで表示期間を変えると見え方が変わるのと同じです。1日チャートと1年チャートで印象が異なるのは当然ですが、どちらも実際の株価データに基づいています。

通貨強弱チャートでも、短期の起点を使えば短期のトレンドが見え、長期の起点を使えば長期のトレンドが見えます。これは分析の「目的」に応じて使い分けるものであり、操作とは異なります。

Q. なぜ「円」のような絶対的な単位ではないのか?

FXでは8つの通貨を比較するため、「円」や「ドル」のような特定の通貨単位は使えません

例えば、USDの強さを「円で測る」と、USD/JPYの動きしか反映されません。しかし実際にはUSDはEURやGBPなど他の通貨に対しても動いています。

そのため、7つの通貨に対する変動率の平均(%) を使うことで、どの通貨に対しても公平な指標になっています。

% は「通貨A vs 通貨B」という個別の数値ではなく、「通貨A vs 他の7通貨全体」を表す総合的な指標です。

Q. FX会社によってレートが違うが問題はないか?

FX会社ごとにレートに微妙な差はありますが、主要通貨ペアでは差は0.1〜0.3pips程度で、通貨強弱チャートの全体像にはほとんど影響しません。

これは株価でも証券取引所ごとに微妙な差があるのと同じで、分析の有効性を損なうものではありません。

Q. すべての通貨強弱チャートは同じ結果になるのか?

基本的な計算方法は同じですが、以下の違いによってツールごとに若干の差が出ます。

  • レートソース: どのFX会社やプロバイダのレートを使っているか
  • 更新頻度: リアルタイムか、1分足か、5分足か
  • 平均化の方法: 単純平均か、加重平均か
  • 対象通貨ペア: 7ペアだけか、マイナー通貨も含むか

ただし、「USDが強い」「JPYが弱い」といった大きな傾向は、どのツールでもほぼ一致します。

通貨強弱チャートの限界

客観的なデータに基づいた指標ではありますが、万能ではありません。

変動率の「大きさ」は相場環境で変わる

ボラティリティが高い相場(雇用統計直後など)では変動率の幅が大きくなり、低い相場(東京市場の午前中など)では幅が小さくなります。

同じ「+0.3%」でも、相場環境によって意味合いが異なります。

過去のデータしか表さない

通貨強弱チャートは起点から現在までの変動を表すものであり、将来の動きを予測するものではありません。「今は強い」ことが分かっても、「この後も強い」とは限りません。

他のテクニカル分析やファンダメンタルズ分析と組み合わせて使うことが重要です。

まとめ

通貨強弱チャートは、実際の為替レートの変動率から数学的に算出された、根拠のある指標です。

理解しておきたいこと:

  • 縦軸の単位は「各通貨の相対的な変動率(%)」
  • 7つの通貨ペアの変動率を平均して算出される
  • 入力データは実際の市場レートであり、恣意的な操作はできない
  • 全通貨の合計がゼロになる構造上、特定通貨だけの印象操作は不可能
  • 起点の変更はチャートの表示期間を変えるのと同じで「操作」ではない
  • 「円」のような絶対単位ではなく、7通貨に対する相対的な%を使うのは、公平に比較するため

次回SNSで「この図の単位は何?」と聞かれたら、この記事のURLを共有してください。

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